あなたを想い続けて私は猫になった5章

5章
失う記憶と蘇る記憶

長い髪の女性が
こちらを鋭い目付きで見ている。

美鈴「ひっ!」

慌てて目を逸らした。
でも怖いもの見たさか
恐る恐る再び写真を見た。

やはり鋭い目つきで
こちらを睨んでいる。
でも…なんでだろう?
最初に見た時より怖さが薄れた。

写真の女性をよく見ると
今は寂しそうに
見つめているようにも感じる。

私を見ているのだろうか。
いや、彼を…
写真を撮っている和磨を
見ているのかもしれない。

和磨の知り合いなのかな?

ん!?

女性の下半身が消えている!

きゃーぁぁあ

美鈴は恐ろしさのあまり
写真を削除した。

和磨が私を撮ってくれた
唯一の1枚だったけれど…

美鈴は大きくため息をつく

そういえば
和磨の営業先で
ある事件があったって…

マンションで女子大生が
ストーカによって刺殺された事件。
事件後、和磨は新人社員と
そのマンションでの営業を終えて
エレベーターに乗った。

そのエレベーターで
さらなる事件が起きる。

エレベーターに乗り込んだ2人は
1階へのボタンに人差し指を伸ばす
と同時に筋肉が肘を伸ばすのを拒む

「赤い…染みが…」

「け、血痕かも…」

と話した直後、
頭上から鋭い視線を感じた。

上を…上を見上げると!?
真紅に染まった女性が
和磨たちを睨んでいる!

密室に木霊する言霊

女性はすぐ消えた。

「あわわわわ
 ス、ストーカーに刺殺された
 女子大生の霊かも…」

2人同時に目を合わせ口を開いた。

和磨「こんなことがあったんだ」

和磨からその話を聞いた時は
すごく心配したことを思い出す。

美鈴「何故…和磨を?
和磨は犯人ではないのに。
似ているのかな?
何か縁があった人かな」

和磨「まったく知らない女性だよ」

美鈴「肩とか重くない?」

和磨「重い…その頃からかなぁ」

美鈴「お払いしてもらっては?」

その時は心配と同時に
霊に恐怖を感じた美鈴は
和磨と会うのが少し怖かった。

その後
度々、電話やメールで和磨の
体調を確認していた。

薄れる記憶とはっきりしない現実

それからひと月後…
美鈴は和磨のいる大阪に向かう。
いつもと変わらず優しい
時間が流れて幸せを感じていた。

帰る日に口喧嘩をした
駅で少しお互いがイラっとして。
多分、
和磨も今まで私に気を遣って
我慢してたんだろうなぁ
口喧嘩のきっかけは
もう覚えていない
そんなやり取りがあったことだけ。
恋人同士でもありがちな
些細なことだったと思う。

またねの言葉も言わず
東京行きの新幹線に乗ったことを
美鈴は写真を整理しながら
想い出していた。

あの日から少しずつ…
和磨との距離を感じ始めた。

「音信不通」

「祖父の墓参りに行くね」

とメールをした直後に
かかってきた和磨からの着信。
反応の早さに嬉しい気持ちで
応答ボタンを押す。が…
携帯の電波が悪かったのか
不具合ですぐに切れてしまった。

すぐにかけ直したが出ない。
何度もかけたけど出ない。

それから連絡が途絶える。

あれから1年が過ぎて
2年目に足を踏み入れる。

忘れかけてた記憶と
悲しみが渦を巻いて
涙がぼろぼろと流れてきた。

こんなに…こんなにつらいのなら

和磨とのことは全て忘れ去りたい。
夢だったと思いたい。

泣き崩れ泣きはらした時、脳裏に
あの骨董店の彼の顔が浮かんできた

彼に会いたい…
和磨を忘れたいから?
あの骨董店の彼を好きになったの?
和磨がダメなら彼なの?
葛藤する美鈴。
わたしは…わたしの心は
こんなにも不器用なのか。

自分で自分が解決しない
明日…お店に行ってみよう。

そう考えたら心が落ち着いて
いつのまにか美鈴は眠りについた。

神様の操作ミス

毎日、浅い眠りが続いていたが
昨夜は久しぶりに熟睡した。

今日は仕事の帰りに
お店に行ってみよう。
あの人に会える

ウキウキと少女のような
気分で家を出た。

仕事に出てみるとスタッフの
1人が急に休みになり
代わりをしなくてはならなくなった
最終のお客様の予約は18時30分

1時間コースだから…
あー。今日は間に合わないな。

それから何日もタイミングが合わず
なかなか骨董店に行けない
日が続いていた。

気がつけば
休みもなく働きっぱなし…
ひと月近くも過ぎていた。

明後日は休めそうだから
今度こそ骨董店行ってみよう。

帰宅してシャワーを浴びた。
今日は怠けてコンビニ弁当で
ビールを飲みながら
お気に入りのテレビドラマを観る。

明日は骨董屋店の彼に会える
と思うと気持ちが明るくなる。

やっぱり…彼を好きになったのかな

彼を思うと胸がドキドキする。

外から慌ただしい
風と雨の混ざり合う音
いつ降り出したのだろう。

明日荒れなきゃいいけど…

目が覚めると
まだ雨は強く降っていた。

なんとなく気が重くなったが、
今日じゃないと
次に会えるのはいつになるか。

朝食を摂りながら
天気予報と外の様子を眺めた。

昼から雨が上がるみたい。
ランチがてらに行ってみようかな。

電車の揺れが今日は心地よく感じる
枕木を弾く音も
心を安らげるメロディに聴こえる。

駅前のケーキ店で
彼が好きだと話していた
シュークリームをお土産に買った。

なんだかドキドキする。

店の前に立つと
なんだか雰囲気が違う。

この空気感。そうだ…
初めてこの店に入った時に
感じたものと一緒だ。

美鈴は不安な思いが
湧き上がるのを感じながら
店のドアを開けた。

5章 完

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でお逢いしましょう
お楽しみに!

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