あなたを想い続けて私は猫になった6章

6章
再び時空を彷徨い始める

店のドアを開けると
会いたかった彼の笑顔が
飛び込んできた。
ホッとため息をつく。

彼におみやげの
シュークリームを渡すと
子供のように喜んだ。

美鈴は子供を見つめる
母親のような気持ちになった。

ふと考える

私の気持ちは母性愛なのか?

なんだか笑いたくなるのを堪えた。

彼が淹れてくれた
コーヒーを飲みながら
2人でシュークリームを食べる。

彼の笑顔を見ていると
幸せな気持ちになる。

そういえば!?
彼の名前を聞いていただろうか?

…今更、聞けないよね。
失礼だよね…

そう思った時

店員「あのぅ…お名前伺っても
宜しいですか?
先日お会いした時に
お聞きしたかったのですが
お客様ですし失礼かなと
思ったりして…」

恥ずかしそうに頭を掻く仕草が
妙に可愛らしくて胸が熱くなった。
彼から聞いてくれて嬉しかった。

店員「僕は弘也といいます。
田沼弘也(たぬま ひろや)です」

美鈴「わたしは美鈴。
加山美鈴(かやま みすず)です。
名前負けしています。あはは」

弘也「美しいですよ」

美鈴の心臓が爆発しそうになる。

弘也「いつお会いできるか
毎日外を見ていました。
来てくれてありがとう」

2人だけの静かで楽しい時間が
ゆっくり流れた。

「こんにちは」

店先で声がした。

美鈴は長居したことに気づく。

「また来ます」

弘也「あ、はい。また」

彼がちょっと寂しい顔を
したように見えた。
それが嬉しかった。

美鈴も後ろ髪を
引かれるような思いで店を出た。

その数日後、
急に夏休みが取れることになった。

オープンして2年目
昨年は夏休み返上だった。

好きな仕事で夢中だったから
特にキツイとは感じなかった。

夏は繁忙期、休もうと思えば
調整はできたが
あえてとらなかった。

仕事している時間だけは
和磨への想いを忘れられたから。

だが、今年は違う。
楽しみができた…。

弘也さんに会いに行こう。

明日は何着て行こう。
何時頃がいいかな。

そんなことを思いながら
ベッドに寝転がる。

そういえば…
弘也さんの顔色が
良くないように見えた。

シュークリームを手渡す時
一瞬、手に触れたが
ヒヤッと冷たくてビックリした。
急に心配になり
明日は様子を見に必ず行こう。
美鈴は、すぐ眠りにつく。

深夜
ふと目が覚めた。
携帯の時刻を見ると

午前3時30分

まだこんな時間…ん?
あれ?

起き上がり明かりをつけた。
再び携帯の画面を見る。

7月2日

7月2日…えっ何で?

今日は7月8日のはず!

また時間のズレが
始まったのだろうか。

不安な予感に美鈴は
そのまま眠れずに朝を迎えた。

7月2日に戻り同じ行動をとる。

「偶然なのか必然なんだろうか」

同じ道を歩き同じ電車に乗り
シュークリームを買って…
同じ光景を見ながら
弘也さんの店に着いた。
ドキドキする。

「これも同じ?」

不思議な感覚と共に
新たな思考が芽生える。

「具合どうだろう」

ぽーっとしながら店に入る美鈴

「ようこそ!」

笑顔の弘也が美鈴の目の前に現れた
我に還った美鈴は
まだ足が止まらず前に進み
鼻と鼻がぶつかりそうになる。

2人で驚き2人同時に吹き出した。

顔色良いみたい。

シュークリームを手渡す。
手が触れた。

あ、温かい。

あれ?
時間は戻ってるが、少し違う。
でも、元気ならいいよね。

楽しい時間
このまま続いてほしいな。
この時、美鈴は弘也のことを
好きだと確信する。

帰り際に弘也から
美術館に行かないかと誘われた。
なんでも友人の絵が
展示されているという。

「やったぁ」

美鈴は小躍りする。

デート当日

美鈴は念入りにおめかしをして
美術館に向かった。

「早く来すぎちゃった
あたりをぶらり歩いてみよう」

見るもの全てが新鮮に思える。
待ち合わせ時間少し前に
美術館に戻った。

待ち合わせは確か11時30分

時計を見ると今は11時32分

そろそろかな
弘也さんはどちらから来るのだろう

空を仰ぐと雲一つない綺麗な青空。
気持ちが良い。

長針と短針が愛し合う正午

弘也はまだ現れない。

電車が遅れたのかな?

メールしてみる。

12時30分
まだ既読にならない。

何かあったのかな?

14時20分
美鈴は帰ろうかどうしようか迷う。

携帯忘れて出てるかもしれない。
それとも今日の約束忘れてる?
もしかしたら
また時間のズレなのだろうか。

帰りかけては戻り
帰りかけては戻り。

周りの人から見たら不審者に
見られているのではないかな?
やっぱり帰ろう…

そう思ったとき携帯が振動した。

15時40分

「あ、弘也さんかな」

期待を込めて携帯を見た。
が…店からだった。

辺りの気を配りつつ店へ電話をした。

美鈴「もしもし、美鈴です。
着信ありましたが、誰かしら?」

スタッフ和子「あ、店長!和子です
お休み中のところすみません。
美代子さんのお母様が
今朝亡くなられまして…明後日の
ご予約いただいているのですが
店長入って頂けませんか?
それと…」

美鈴は店に行かざるを得なくなる。
弘也にメールをして
美鈴は勤務先のサロンに向かった。

16時00分

サロンに着いたら解決ができていて
美鈴は出勤しなくてよくなった。
雑務を終わらせてから
時計を気にしながらサロンをあとに
弘也の店へと急ぎ足で向かう。

17時05分

美鈴は胸騒ぎを覚える。

おかしい…何かあったんだ。

弘也さんの自宅はわからないから
とりあえず店に行ってみよう。

もしすれ違ったらいけないから
メールをしておいた。

17時50分

駅に着き、店に急いだ。

えっ!???

美鈴の顔がみるみる青ざめる。

長針と短針が別れを告げる18時

店が…

跡形も失い!

6章 完

不定期連載
次回 7章
でお逢いしましょう
お楽しみに!

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